アーティスツ・ユニオン(プレカリアートユニオン アーティスト支部)が結成され ました。http://artistsunion.jp/index.html
2023年2月24日に、日本初となる現代美術に携わるアーティストによる労働組合結成 の記者会見を行い、多数のメディアに報道していただきました
***** アーティスツ・ユニオン設立に寄せて 支部長 村上華子
2023年1月19日オンラインにて、アーティスツ・ユニオン(プレカリアートユニオン アーティスト支部)を結成しました。
メンバーは、美術業界のネットワークである art for all が2020年に設立された当初からユニオンの必要性を感じてはいました が、具体的に動き出してからは約3ヶ月という短期間で結成に至りました。
これはひ とえに、プレカリアートユニオン多摩美支部の笠原恵実子さん、小田原のどかさんの 力強い後押しと、執行委員長の清水直子さんのサポートがあったからこそです。ま た、副支部長の湊茉莉さん、書記長の川久保ジョイさん、設立メンバーの加藤翼さん との緊密な信頼関係もありました。
この場を借りて感謝申し上げます。 私自身は、11年前からフランス、パリを拠点に外国人として生活しつつ、アーティス トとしての制作活動に取り組んでいます。美術の学位は日本で取得しましたが、芸術 家の社会的地位が低いこと、仕事をしても報酬がないことが多いことなどを目の当た りにし、フランスに移住しました。
私は作品制作において、写真などを用いたインス タレーションを作っており、当初は、自分の作風に合っているから、という理由でフ ランスにしたのですが、この国ではアーティストとして、女性として生きていくため の基本的なインフラが整っており、外国人であってもなくても活動の機会は開かれて いると感じます。
このように、文化芸術に従事しつつより良い環境を求めて拠点を移 す人のことを「文化移民」と呼ぶそうです。 フランスにおいて、プロのアーティストはメゾン・デ・アーティストという組織に属 し、アーティストのための社会保障制度もあります。
また、ADAGPという著作権管理 団体と契約を結び、毎年の仕事に応じて計算された著作権料を受け取ることができま す。毎年公募で国および各地方自治体の収蔵委員会に作品を提案することができ、ま た、自治体の所有するアトリエ付き住居を安価に借りたり、制作のための助成金を受 けられる可能性があります。
このような環境を求めて世界中からアーティストが集ま るため、それぞれの機会を得るために高い競争率に晒されることも事実ですが、その 中で新しい作品の可能性が広がることもあります。
フランスで活動を継続し、その独自のシステムの恩恵に与るなかで気づいたことは、 これも、長い年月をかけて文化政策を設計する側が考えてきただけでなく、アーティ ストが自ら声を上げることで仕組みの改善に貢献してきたということです。 私は近年、日本において作品を発表する機会があるたびに「報酬がない、あるいは不 当に少ない」という状況に言葉を失うことが多々ありました。
それが不本意であるこ とを伝えても、私個人の意見では何も動かず、将来的にギャラリーを通じて作品販売 につながるかもしれないという仮定を前提に、実質的にタダで仕事をせざるを得ない 状況に悔しい思いをしてきました。また、適正報酬がないことにより生じる権力のア ンバランスがハラスメントの温床となってきたことも事実です。
しかしながら今回、 同じ思いを抱く仲間で組合を結成したことで、今後は胸を張って交渉することができ ます。 日本の美術業界においてこれまで暗黙の了解とされてきた慣習を見直し、ハラスメン トや労災のない環境で安心して働き、報酬を受け取れるようにすること。
アーティス トの「報酬ガイドライン」、「倫理ガイドライン」、「労災ガイドライン」を定める ことを通じ、業界全体の透明性を高め、健全化を図ること。これからやることは山積 していますが、いずれもポジティヴな変化につながると確信しています。このような 機会をいただいてありがとうございました。 *****