
事務局(よこはまシティユニオン)
〒230-0062
神奈川県横浜市鶴見区豊岡町20−9
TEL:045-575-1948
事務局(よこはまシティユニオン)
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ひとりでも、雇用形態に問わず加入できる地域に根差した労働組合が集まった組織、コミュニティユニオン全国ネットワーク。全国33都道府県で79団体が加盟しています。本コーナーでは、ひとつひとつのユニオンに話を聞き、個々のユニオンをどのような人が支えているのか、紹介します。(聞き手:CUNN事務局)
ユニオンくしろ
組合結成年 | 2011年 |
組合員数 | 38人(インタビュー当時) |
組合員の職業 | 介護、栄養士、建設会社事務員、不動産会社営業、トラックドライバー、派遣清掃員など |
ホームページ | http://union946.sakura.ne.jp/ |
電話番号 | 090-1528-0946(受付時間 9:00-21:00) |
<ユニオンくしろの事務所の様子。左から副執行委員長の石割さん、執行委員長の横田さん、書記長の工藤さん>
インタビュー日:2025年4月24日
―今回は、北海道の釧路市を中心に活動するユニオンくしろの書記長・工藤和美さんに話を伺います。
まずはじめに、工藤さんが労働運動に関わるようになったきっかけを教えてください。
私は十勝出身で、1976年から釧路のダンボール製造会社で勤めていました。はじめは機械工でしたが、そのうち事務職に。働き始めて10年を過ぎた頃に、同僚が機械に腕を巻き込まれて入院が必要なケガをしました。これまで会社では、ケガをした社員に対して、解雇はしないまでも、職場にいられないような状況に追い込み自主退職を迫るということを繰り返されていたいたため、彼を守るために、釧路中小労連で労働組合を結成しました。
組合を結成して、ケガをした彼は安心して働き続けられるようになりました。しかし、会社が、組合の副委員長だった私に対して組合を潰す目的として札幌への不当転勤を命じたんです。明らかな不当労働行為(注:労働組合の権利を守るために、会社がしてはいけない行為。労働組合法第7条違反)でしたが、転勤を拒否すると解雇されて生活が立ちゆかなくなるため、一旦は札幌に引っ越して、働き続けながら北海道労働委員会で闘いました。1年半後に、会社と和解して釧路に戻れることになり、同じ職場で65歳まで働きました。
従業員30名弱の会社で、組合員は12~3人ほど。過半数組合にはなりませんでしたが、私が定年間際に管理職になるまでは組合活動を続けて毎年粘り強く交渉し、退職金制度を確実なものにするため、中退共(注:中小企業退職金共済事業。会社が外部機関に退職金を積み立てるため、労働者は確実に退職金を受け取ることができる)に加入させたりしました。
―同じ北海道と言っても、釧路と札幌は300km離れているので、東京の人が名古屋に転勤命令を出されるようなものですよね。その後職場で働き続けるだけでなく、しっかり組合活動も続けたのもすごいです。
不当配転をされたのが1989年で、私の労働争議に、当時の国労(国鉄労働組合)の人たちも支援してくれたんです。そのときの縁で、釧路に戻ってから、「国鉄闘争と連帯する会・くしろ」の事務局長につき、釧路中小労連(中小企業の労働組合の連合体)の副委員長も務めました。
私が60歳で嘱託社員になって、少し時間ができたときに、周りの組合経験者と、「ひとりでも入れる労働組合を作ろう!」という話になって、2011年にユニオンくしろを結成しました。結成当時の組合員は10名でした。
―工藤さんの不当配転の経験が、まわりまわってユニオンくしろの結成ににつながるんですね!
<ユニオンくしろ結成大会の写真>
―最近はどのような労働問題を扱いましたか?
今年のはじめ、根室で水産加工の外国人技能実習生が解雇された問題で、団体交渉を申し入れて、国民健康保険・雇用保険の受給申請や、解決金を勝ち取ることができました。根室と釧路は100kmほど距離がありますが、何度か往復して、本人たちと話し合いをしたり、団体交渉を行いました。外国人労働者の労働事件は初めてでしたが、Googleレンズを使って翻訳をしたり、LINE電話でボランティア通訳の方にも同席をお願いしたりして対応しました。
―今は日本中のいたるところで多くの外国人労働者が働いていますよね。トラブルに遭ったときに相談できる場があるのは本当に大事だと思います。
一昨年、中学生と保育園の子供を持つシングルマザーの労働争議もありました。彼女は、建設会社の事務として働いていましたが、ワンマン社長が「パチンコで知り合った人を雇う」ことを理由に彼女に突然解雇を通告したことがきっかけでユニオンくしろに加入しました。組合で交渉をして、会社が生活保障のための解決金を支払うことで和解しました。次の職場でもパワハラと労働条件の一方的な変更をされましたが、団体交渉をして、撤回をさせることができました。「労働組合を通して人間としての尊厳を守れた」と言ってくれたことが、本当に嬉しかったです。
結成以来、毎年30件前後は労働相談がきます。一番多い相談はパワハラで、次に解雇や待遇改善の問題です。
―立場の弱い人ほど、ユニオンが力になれる場面は多いと思います。ユニオンくしろは、労働相談のほかに、どのような活動をしていますか?
ワークルール学習会を年に1回開催し、顧問の弁護士を講師に迎え、セクハラ・パワハラや残業代などを学習しています。
ほかにも、労働法制改悪法案阻止全国キャラバンや、コロナ禍のホットラインなど、その時々で必要な活動をしています。
また、年に1回、市の雇用労働相談所や生活相談支援センター、男女共同参画センター、労基署やハローワークへの訪問も行っていて、ユニオンの最近の活動について伝えたり、情報交換をして、行政との連携も強化しています。
―行政に、ユニオンのことを正しく理解してもらうことは重要ですね。
<ユニオンくしろの月に1回の組合員会議の様子>
<写真:工藤さんの好きな、標津羊羹>
―忙しい毎日だと思いますが、工藤さんの息抜きはなんですか?
歴史小説などの、読書が趣味です。歴史とは少し違いますが、最近読んだ本で一番のおすすめは『未明の砦』(2023年、太田愛)です。大手自動車メーカーの工場で働く非正規工員たちが労働組合を結成する話で、現代の労働問題を主軸に、若者たちの群像劇がスリリングに描かれています。
甘いものを食べるのも好きです。中標津(北海道東部の町)の標津ようかんは、金時豆の入った茶色っぽい羊羹ですが、絶品です。ミートスパゲッティの上にカツがのった「スパカツ」は、釧路のローカルフードとして人気で、私も大好きです。
―美味しそうですね! 釧路で職場の問題に悩んでいる人は、ぜひユニオンくしろに相談してください。