物流の2024年問題への対策で、国民民主党の玉木雄一郎代表が大型トラックの高速道路走行の速度規制を時速80キロから100キロにする規制緩和を主張している。
トラック運転手が多く個人加入するプレカリアートユニオン(全国ユニオン)は4月16日、玉木氏に対し「高速道路の安全を脅かしトラックドライバーの心身を危険にさらす発言を撤回して下さい」と訴える意見書を公表した。
意見書は「24年に運送業にも時間外労働の上限規制が適用されるのは、労働者が健康で安全に働けるようにするための施策であるはず。危険を冒してでもスピードを上げるのは本末転倒」と批判。
「3割運べなくなるなら働く人を3割増やそう。人員を確保できるよう長時間労働を是正し基本給を上げよう。過当競争を抑制し、『2024年問題』をともに乗り越えよう」と提案している。
以下、要請文となります。
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2023年4月16日
国民民主党代表
玉木雄一郎様
プレカリアートユニオン
執行委員長 清水 直子
運送・運輸支部支部長 美澤 良之
〒160-0004 東京都新宿区四谷4-28-14パレ・ウルー5F
ユニオン運動センター内 プレカリアートユニオン
TEL03-6273-0699/FAX03-4335-0971
国民民主党玉木雄一郎代表の「2024年問題」に係る大型トラック速度規制緩和発言への意見書
国民民主党代表の玉木雄一郎氏が、4月4日に自身のTwitterで、【トラックドライバーの時間外労働に960時間の規制が掛かることで物流のうち3割が運べなくなるという「2024年問題」。
その対策の一つとして大型トラックの80km/h規制を100km/hに緩和してはどうでしょうか。東京-大阪間が片道1時間半短縮でもっと物が運べます。車の安全性能も高まっています。】と発言しました。
大型トラックの80km/h規制を100km/hに緩和するのは、危険です。
なぜ大型トラックに80km/h規制が存在するかといえば、制動距離(ブレーキを踏んでから停車するまでの距離)が長く、荷物を積んでいれば、さらに制動距離が伸びるからです。
現在、運送業界は、中小零細運送業者が乱立して、過当競争が進んでいます。このトラックドライバーの就労環境は、大変厳しい状況にあります。特に長距離輸送のドライバーは、長時間過重労働を強いられています。
玉木氏は、高速道路の安全を脅かし、トラックドライバーの心身を危険にさらす発言を撤回してください。私たち現場のドライバーと面談し、トラックドライバーの就労環境について、実態を知ってください。
プレカリアートユニオンは、連合の構成団体である、全国ユニオン(全国コミュニティ・ユニオン連合会)に加盟する、誰でも1人でも加入できる労働組合です。
2012年に結成して以降、運送・運輸会社の長時間過重労働を是正し、固定残業代を悪用するなどして残業代を払わない運送会社に未払い残業代を払わせ(長時間労働と残業代不払いは表裏一体の問題です)、ドライバーの賃金から違法に天引きした商品事故の弁償金を取り戻すなどの取り組みをしてきました。
プレカリアートユニオン運送・運輸支部は、中小運送・運輸会社で働くドライバーで作る支部です。
大型トラックの80km/h規制を100km/hに緩和して、東京-大阪間の片道が1時間半短縮したところで、3割物を多く運べるわけではありません。
2024年に運送業にも時間外労働の上限規制が適用されるのは、労働者が健康に安全に働けるようにするための施策であるはずです。にも関わらず、危険を冒してでもスピードを上げるのは、本末転倒です。
3割運べなくなるなら、働く人を3割増やしましょう。人員を確保できるよう、長時間労働は是正し、基本給を上げましょう。
ドライバーを危険にさらすのではなく、待遇を改善し、運送業界の過当競争を抑制し、物流業界の体質を変えながら、「2024年問題」をともに乗り越えるよう、要請します。